リフォーム間取のレシピ②~都市型住宅・2.5間間口の家が生まれ変わるまで

リフォーム間取りのレシピ

1979年(旧耐震)に建てられた間口2.5間の住宅について、一部和室の趣を残しながら、大規模間取り変更(耐震工事を含む)した例をご紹介します。

建物概要と既存状況

建物の概要です。
1979年ですので、2024年時点で築42年になります。
延べ坪数は約26坪
先代は土間をお仕事に利用されていたようで、土間から直接居間があり、2階はすべて和室の3部屋がふすまで仕切られているのみです。

お客様は相続を受けて、リフォームして移り住むということで依頼がありました。
年代的に古いので、床なり傾斜も見られましたし、壁のひび割れ等も確認できました。

しかし、2階の和室(3)は床の間もある趣のある部屋であったため、活かしてリフォームるすることにしました。

この建物の課題

課題と要望を箇条書きします。

【お施主様の希望】
・寒さ対策
・暗さ対策
・モダンなデザイン希望
・ご夫婦二人くらし(子供なし)のため、2LDKでOK
・車が停めにくいため縦入れ希望

【設計視点での課題】
・Y軸方向(縦方向)に対してX方向(横方向)の開口部が多く壁量が少ない
・床の状態が悪い。床の断熱がなく底冷えする状況。温度差結露による下地の劣化がある
・外壁のひび割れも多い、耐震対策必用
・極力柱はぬかずに設計したい

リフォーム間取

ということで、建物の劣化対策である外壁や床下地などはすべてやり替えつつも
一部和室を活かす案を検討しました。
明るさ対策や1階の壁量を増やす効果として2階リビング案を提案させていただきました

サッシは和室を除き全交換。
屋根も葺き替え
1階は床根太もやりかえまして、根太の間には断熱材を施工。
更には防湿コンクリートを打ちまして、湿気対策をしました。
※床下の高さに注意 メンテナンスのため潜れる高さ確保するのが理想です

建物の強度にも留意していきたいので、極力柱は活かしていきます。

まず1階部分ですが、柱を極力残したかったので元の軸を残しつつ平面を検討しました。
抜いた柱は5本に対して新規の柱もたくさん配置させていただきました。
後に耐震計算の結果も掲載しますが、910ピッチの耐震壁を配置するためでもあります。

ビルトインガレージのところは新規で基礎を配置してます。

また玄関ポーチがゆったりととれないので、玄関引き戸にしてます。

洗濯については寝室から庭側に干すこともできますが、室内干しが多いとのことで
洗面脱衣を広くとってハンガーパイプも配置しました。

次に2階です
実は構造的には大幅な変更はなされていないのですが、ガラッと雰囲気が変わります。
LDKが14帖とコンパクトになりますので、そのぶん一部勾配天井にして空間に広がりを持たせます。
梁補強とキッチンの排気ダクトがきますので、キッチンを境に平天井と勾配天井を切り替えました

和室は掲載許可を得ている物件で、似た間取のものの写真が残っていたので参考にアップします
↓ビフォー・・・ちょっとくらくてわかりにくいですが(-_-;)

↓アフターです
壁が明るくなり雰囲気が変わりますよね

補強計画

次に補強計画ですが、耐震診断するまでもなく1階のX方向の壁量が足りないのが分かっておりました。
土間入り口の開口部の大きいですし、短手方向なので弱くなります。

図面は残されておりませんでしたが、真壁が多かったのと、壁下地もべニアだったため柱の位置はほとんどプロットできました。

この時期の建物は以下の3点を改善する必要があります

壁量不足
②柱頭柱脚および筋交い金物不足による、ほぞぬけ対策
③バランスの検討(偏心率0.15以下・・・下の図赤いハッチ部分に剛芯をおさめる)

①についてはこちらの記事

年代ごとに異なる木造住宅の耐震性 | うまもつこ@主婦建築士の快適生活 (umamochu.com)

②と③についてはこちらの記事に詳細解説しております。合わせてご覧ください。

新耐震基準の建物なのに全壊!1981年~2000年に建てられた木造住宅の特徴と改善方法を解説 | うまもつこ@主婦建築士の快適生活 (umamochu.com)


それでは、具体的な診断結果を載せたいと思います
左が既存、右がリフォーム後になります。

1階においては45*90の筋交い+構造用合板の4.5倍壁を配置かつ各節部の金物補強(筋交いおよび柱頭柱脚)
2階は構造用合板による2.5倍壁かつ柱頭柱脚の金物補強を配置しております。

配置するにあたっては偏心率の変化を見ながら微調整しておりますので、むやみやたらに入れればよいというわけではありません。
それでは数字を見ていきましょう

↓既存建物の評価

上位構造評点は1.0あれば必要耐力があると評価されますが、やはり1階のX方向が弱いですね。
また、()の中の数字が偏心率になりますが、こちらは数字が大きいと地震力を受けたときに建物が大きくねじれ変形をおこします。

外壁のひび割れの原因などになりますね
偏心率については下の剛芯と重心を近づけてあげるのが重要です

↓リフォーム後の建物の評価

上位構造評点は1.0以上でてますね。
一番弱いところが2階のY軸方向ですが、構造用合板で補強すればまだまだ強くなる要素のある間取です。お客様がご希望されれば、いわゆる耐震等級3相当といわれている評点1.5以上も計画可能な間取となりました。

内装イメージ

↓ビフォーのイメージ写真です
(さきほどの似た物件から拝借しました。2階の間取りは年代も含めほぼ同じ)

手前の二間をつなげてリビングに変身しました。
新築同様に生まれ変わりますよ

まとめ

いかがでしたでしょうか。
東京や神奈川の下町でよく見かける2間~2.5間間口の家。
筆者もほかにも何件かやった覚えがございます。

しかし、お住まいになる方の家族構成だったり、趣味だったり、優先するべきところが変わると同じ間取にはならないのが面白いです。

リフォームであっても注文住宅と同様、お客様と一緒にお住まいをつくっていく過程がとても楽しいです。

引き続き間取のレシピを順次アップしていきたいと思っておりますので、また遊びに来てくださいね

それではまた!

↓有名間取を使ってリフォーム計画~耐震診断も

リフォーム間取のレシピ③~礒野家をリフォーム(前編) | うまもつこ@主婦建築士の快適生活 (umamochu.com)

リフォーム間取のレシピ④~クレヨンしんちゃん野原家(前編) 既存の間取を考察 耐震診断 | うまもつこ@主婦建築士の快適生活 (umamochu.com)

リフォーム間取のレシピ⑤~ドラえもん野比家の間取と改築案 補強案 | うまもつこ@主婦建築士の快適生活 (umamochu.com)

コメント

タイトルとURLをコピーしました