構造の考え方の違い
日本の伝統的な工法である在来軸組み工法は、土台、柱、梁で構成された点で支える軸組み工法で、必要な部分に壁(筋交い)を配置していく方法。
日本の住宅産業においては圧倒的に多い工法となります。
一方、2×4で知られる枠組み壁工法はその名の通り製材で枠組を作り、合板などの面材を張り付けた床1、壁4、屋根面1の6面で支える構造で、必要な部分に開口部を配置する方法である。
主に北米で普及発展してきました。
日本でも築30年前後くらいから多く見られるとおもいます。
点で支える在来工法のイメージ(左)と面で支える2×4のイメージ(右)
耐震性
在来軸組み工法は過去の地震の経験を活かしながら変化改善して参りました。
点の力を強くする接合部(金物)、変形を補う必要壁量の変化、建物のバランスの検討にり、負担偏りの少ない建物にする事が重要です。
現行基準に至るまでの流れについては以下の記事に詳細をまとめましたのでご覧になってください。
新耐震基準の建物なのに全壊!1981年~2000年に建てられた木造住宅の特徴と改善方法を解説 | うまもつこの快適生活 (umamochu.com)
一方2×4の製材は38mm×89mmと比較的小さいが、その本数、間隔を調整することで1部材当たりの負担力は軽減され、建物全体にバランスよく力が伝わる。
また、6面体の構造面材に囲まれているため地震力を受けたときの変形に耐える力が各方面全体で働くため耐震性は高いものとなります。
2000年よりも前の建物で比較するのであれば耐震性については 在来工法<2×4 と評価されてきました。
近年の在来工法は弱点であった接合部や変形バランスの法的改善がされましたし、更には品確法による耐震等級などで具体的な構造計算と評価を行う様になってきたため、在来工法の耐震性が向上されてきております。
そのため近年では工法だけでは比較できなくなってきましたが、従前の建物で比較しますと
従前の在来軸組工法<2×4と言えると思います
耐火性
木材は燃えやすいのはご存じかと思いますが、ある一定の厚さの木材は表面の燃焼と共に炭化層を形成しその層が耐火被覆となり、内部への火の進行を防ぎます。
2×4材の場合38mmの厚さの小さな断面となりますが、何枚も重なると火災時に耐えうる層となり耐火性能を発揮します。
2×4の構造の特徴が平面を一定の区画で区切られた構造であるとともに、壁パネル、床(天井)パネル内部の部材も細かく区切られたつくりになっているため、自然とファイヤーストップの役割をしており、火がほかの部屋へ回り込むのを防ぐ効果があるからです。
一方で、在来軸組工法で意図的にファイヤーストップや不燃性の高い下地を伸ばしてするなどして同様の効果を測る省令準耐火仕様というものがあります。
通常2階建ての木造住宅であれば法律的に必要とされない準耐火構造ですが(3階建ての場合は必用)
省令準耐火構造で設計すれば、火災保険などの割引を受けることができますので、新築住宅を建てる際には省令準耐火構造もご検討してみてください。
※なお、準耐火構造と省令準耐火構造は同じ仕様ではありません。
省令準耐火については色々なやり方があるのですが、吉野石膏のHPに石膏ボードを使った省令準耐火についてまとめておりましたので添付したいと思います。
せっこうボードを使った省令準耐火構造のすすめ|知れば知るほどナットク|サポート|吉野石膏 (yoshino-gypsum.com)
ということでこちらも改善策はあるものの
従前の在来軸組工法<2×4工法となります
遮音性
防音性(断熱性も)については、吸音効果のある断熱材の入り方やサッシの仕様などで左右されるのは知られているとは思いますが、構造や空気層がどれだけあるかも影響して参ります。
また、騒音の種類によっても変わってきますね。
騒音には空気から伝わる音(人の話し声など)と、物質から伝わる音(物落ちた音や2階の足音など)があります。
空気から伝わる音については、気密性が高くなるほど優れてきますので在来工法<2×4となるかもしれませんが、物質から伝わる音については反響音も含めて2×4は通しやすく在来工法>2×4となってしまいます。
よく2×4にお住まいのお客様で「2階の音が気になる」というお声をいただくのですが、2×4の場合は床根太と天井に隙間がなく、構造を伝わって直に1階に音が伝わるためです。
吸音効果のあるフローリングやカーペット、天井裏に断熱材を敷くなど改善はしてみるものの、完全に防ぐのは中々むずかしかったです。
一方、新築をご検討のお客様には必ずこの音問題をお伝え致します。
そのうえで、ご予算があうようでしたら床用のALCなどで防音対策をご提案することにしております。
2世帯住宅や集合住宅などで2×4工法をご検討の場合、上下音対策ご検討してみてください。
設計の自由度 リフォームのしやすさ
先に結論を申し上げますと、在来工法>2×4工法 となります。
比較的どんな形でも対応可能な在来軸組み工法
大きな部屋が必要であればその分梁の断面を大きく設計することで実現可能ですし、リフォームにおいても比較的大幅に間取り変更が可能です。
提案例についてはこちら↓
リフォーム間取のレシピ②~都市型住宅・2.5間間口の家 | うまもつこ@主婦建築士の快適生活 (umamochu.com)
一方で2×4の場合はいくつもの箱(区画)が組み合わさった考え方のため、一定の大きさ以内に壁を配置していかなければなりません。
耐力壁区画は面積40㎡以下
耐力壁の相互間距離12m以下
外周で交差する部分は耐力壁を90cm以上設置
開口幅は4m以下
耐力壁線上には1/4以上の耐力壁を設ける
90cmを超える開口部にはまぐさを設ける
など基本的なルールだけでもこれだけあります。
また、リフォームにおいては更に制約を受けます。
大幅な間取り変更はまず無理です。
簡単な間取り変更・・・例えば壁を取っ払い二つの部屋を一つにしたいといった場合にも2階の根太の方向によっては不可能になります。
完全に壁を取ることができなくても、開口部を広げながら一体感のある部屋を表現することはできますので、あきらめてほしくはないのですが、制約を受けるという事はご理解いただければと思います。
2×4のリフォーム例についても纏まり次第アップしたいと思います。
その他まとめ
これまでの情報をまとめると
耐震性 在来工法<2×4
※在来軸組み工法も耐震等級3クラスになると同等以上期待できます)
耐火性 在来工法<2×4
※省令準耐火構造や構造の隙間を埋める施工を施すことで対応可能です。
遮音性 それぞれの工法によるものの 床衝撃音に関しては 在来工法>2×4
自由度 在来工法>2×4
その他の項目も簡単に
コスト 在来工法>2×4
※2×4のほうがリーズナブルに施工できますが、コロナ禍におけるアメリカの住宅需要の増加や材料の高騰などが重なり徐々にその差が小さくなってきております。
工期 在来工法>2×4
※一般的に2×4のほうが工期は短いです
※最近は在来工法もプレカット(設計図に基づいて工場で予め部材をカットする)が主流となり差がなくなってきました。
とここまで色々比較してまいりましたが、それぞれのデメリットを知っていただくとそこを補う方法も見つかってくると思います。
ぜひご参考にされてくださいね
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