耐震補強工事については上の記事にて
既存建物の状態や、お客様のご要望に応じて補強方法を選んでいる旨記載させていただきました。
こちらのHPでは、大規模リフォームや耐震にご興味をもっていただくために【リフォーム間取りのレシピ】シリーズという名でいくつか例をあげさせていただいております
しかし、お客様のご要望の中には、間取り変更やリフォームは考えておらず「耐震工事だけしたい」というオーダーもございます。
特に、旧耐震の建物(昭和56年以前の建物)について、自治体の補助金を活用して補強工事をご希望される方は、必要最低限の工事をご希望されることが多く
ついでの工事・・
例えば、外壁の塗り替えの時期であれば、外壁側から補強壁を入れる計画を優先していきますが
単純に耐震化のみご希望の場合は「かべつよし」にて計画することが多いです。
かべつよしは、一般的な補強壁と異なり、天井や床を壊さずに高強度の壁が施工できる商品として以前もご紹介させていただいておりますが
今回は具体的な補強計算をしてみて、どの程度の工事内容で評点1.0を満たせるのか検証して参りたいと思います。
補強計画は、建物の構造、年齢、劣化度、建物の形、大きさなど様々な要素に起因致しますが
今回は、一例としてリフォーム間取りのレシピ②でご紹介した2.5間間口の既存建物を使って検証して参りたいと思います。
既存建物の診断 改善点

建物の概要です。
1979年ですので、2024年時点で築45年になります。
延べ坪数は約26坪
先代は土間をお仕事に利用されていたようで、土間から直接居間があり、2階はすべて和室の3部屋がふすまで仕切られているのみです。
こちらを実際に耐震診断した結果が↓こちらになります。

1階は2階を乗せている分、必要壁量が多くなりますが、間口が2.5間ともあり、X方向の壁量が特に少ないですね。
また、2階は壁のバランスが図面上左側に偏っているのを改善します。
補強計画
かべつよしを使って補強計画をしてまいりますが、かべつよしの中にも様々な部材、商品があり、箇所によって使用する部材を選んでいく必要がありますが
主だった項目を説明していきますと、
①材料・・・MDFかモイスの2択
MDFは単独で高強度ではあるものの、並べて連続して配置できないこと、そのままクロスなどが仕上げられないためベニアなどの下地が追加で必要であるため、最初の計画では選ばず、どうしても強度が欲しい箇所のみピックアップする考えです。
逆にモイスは連続使用が可能ですし、そのままクロス仕上げができますので、最初はモイスで計画します。

②納まり・・・大壁か真壁か入隅
今回は1階は大壁仕様、2階は和室なので真壁仕様、直行する耐力壁には入り隅仕様(2階は真壁のままで納まる)をえらびます。
それぞれの組み合わせによって、壁基準耐力が異なるのでそれぞれ入力していき、評点1.0以上を目指した耐力壁の配置がこちら↓

耐震診断の結果がこちら↓
※その他の改修工事を行わないため、劣化度軽減係数0.7はかえません。
低減係数0.7を乗じた上で、評点1.0が確保できており、自治体の耐震補強工事の条件を満たすことができます。

工事の範囲としては、耐力壁を配置した箇所の壁仕上げのやりかえ、1階はキッチンの壁に耐力壁を配置しましたので脱着が必要です。
しかし、床を解体したり、天井を解体する必要がありませんので必要最低限となります。
どのくらいの費用が掛かるかは、工事を行う工務店によって異なるとは思いますが
【かべつよし】の材料費、工事する大工さんの人工、クロスなどの仕上げ業者さんの費用、耐震工事監理の手数料、施工の手数料がかかってくるでしょう。
今回は工事するかべが16か所になります。
それより少なくなる場合もありますし、多くなる場合もあると思いますが
床や天井を解体する場合は、各箇所ごとに下地から直していく必要があるので、大工さんの人工や材料費はもっと多くなりますよね。
上記の内容であれば必要最低限で済むのではないでしょうか。
まとめ
今回は間取り変更、リフォーム工事を伴わない耐震補強設計について具体例をあげてみました。
補強箇所などが増えてしまったとしても、床や天井を壊さずに壁を施工できるので、費用も工期もぐっと抑えられるのではないでしょうか。
また、昭和56年より前の旧耐震の住宅で、ご自宅の強度がご心配というお方は
お住まいの自治体での助成金を調べてみてはいかがでしょうか。
最近は昭和56年~平成12年の新耐震建物についても補助金を検討する流れがひろがっており、東京都では既に実施しているようです。
新耐震基準の建物なのに全壊!1981年~2000年に建てられた木造住宅の特徴と改善方法を解説 | うまもつこ@主婦建築士の快適生活
実際、この時期の建物を耐震診断してみると評点1.0いかない事が多いです。
この「かべつよし」のように、負担なく安心できる住まいづくりができる商品は、
積極的に勉強して今後もどんどん検討し取り入れていきたいと思ってます。
少しでも多くの方の安心、快適につながるとよいな。
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