増築やリフォーム工事によって、意図せず違法になってしまいがちな項目ピックアップして解説したいと思います。
違法増築の概要
建物を新築で建てる際には【建築確認申請】にて法律面でのチェックを受けますが、その後増築する際に知らずに(もしくは分かっていて)違法増築されているケースが意外と多いです。
①建築確認申請を出すべき工事範囲であるのに出さずに増築してしまう
②定められた建蔽率や容積率をオーバーしてしまう
③増築したことによって階数が変わってしまい、定められた構造耐力が不足してしまう
④敷地や道路との後退距離が変わってしまい、道路斜線などの高さ制限違反となってしまう
などがあげられます。
それぞれ順番に解説していきたいと思います。
建築確認申請について
よく大工さんとか、お客様でも少し知識のある方から『6帖の増築だったら申請いらないんでしょう?』と言われることがあるのですが、これは半分正解で半分不正解です。
『10㎡以下の増築は確認申請は不要』という情報は意外と浸透しているのですが、『防火地域、準防火地域以外の地域』という枕詞が抜けたまま知られている気がします。
防火地域や準防火地域については、小さな増築であっても確認申請が必要となりますのでご注意ください。
また、増築はしていないのに確認申請が必要なケースもあります。
確認申請の要不要については別途記事に詳しく掲載させていただきましたので、こちらをご覧いただければと思います。
上記で説明している大規模修繕については、これまでは木造二階建ては対象外でしたが、2025年4月からは木造2階建ての大規模修繕工事についても確認申請が必要となりますのでご注意ください。
2025年建築基準法改正②~木造2階建ての住宅の新築はどう変わる? | うまもつこ@主婦建築士の快適生活 (umamochu.com)
カーポート
住宅に付随するよくありがちな外構工事について順番に解説していきます。
【カーポート】
・・・床面積に算入される(壁芯=柱芯で囲まれた範囲)
・・・建築面積に算入される(開放性により緩和あり)
ただし、国土交通大臣が高い開放性があると認めて指定する構造の建築物には、屋根の先端から1mの範囲で緩和措置があります。条件は以下になります。
外壁を有しない部分が連続して4m以上であること
柱の間隔が2m以上であること
天井の高さが2.1m以上であること
地階を除く階数が1であること
ということで、条件を満たせば下の図のように面積の一部は算入されない事になります。
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プレハブ倉庫
次に別置きの倉庫について
【屋外プレハブ倉庫】・・・小規模であれば算入されない(床面積・建築面積)
小規模について具体的にどういうこと?となり、これまでは建築地の自治体に都度相談に行ってました。最近は具体的な大きさなどを提示する自治体が増えてきたように思います。
ちなみに横浜市の取り扱いは「奥行が1m以下かつ高さが2.3m以下で、床面積が2㎡以内」としております。この規模より大きいものは建築物扱いとなり面積に算入されます。
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サンルーム
【サンルーム】・・・算入されます(床面積・建築面積)
よく見かけるのが、既存のバルコニーを利用してサンルームで囲んでしまっているおうちです
近所にもあります。
開放性のあるバルコニーは床面積には算入されないですが、サンルームにしてしまうと床面積が発生します。
※リクシル商品画像より~違反がなければ工事はおススメですよ。
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バルコニー
【開放性のあるバルコニー(廊下) 】
・・・建築面積には算入される※柱や袖壁がない構造のものは出幅1Mまで算入されない
・・・床面積には条件により一部算入されない
奥行きの小さなバルコニーなどについては問題ありません。
また、柱建てのバルコニーの場合はバルコニーの下の階に用途があるかどうかで判断が異なります。
細かいところは行政によって判断が異なる場合が多いので、微妙な場合は行政相談が良いと思います。
参考までに神奈川県の例をあげたいとおもいます。
※以下神奈川県建築基準法取り扱い基準より(床面積についての解説)
また、出幅が大きいバルコニーについて、以前は床がすのこ状のものであれば屋根ではないので面積には算入されないという理屈が通ったのですが、
最近はすのこ床のバルコニーも面積に算入すると判断される行政が増えてます。
屋外階段
【屋外階段】・・・算入されます(開放性等により緩和有)
一度2階にも玄関が欲しいというご依頼があり、後付けの階段を検討したことがありますが、建蔽率がいっぱいだったので断念した事がありました。
神奈川県の取り扱い集では柱があるかないかによって面積の取り方が異なります。
参考に載せさせていただきます。
ロフト・小屋裏収納など
既存の住宅の小屋裏などの余剰空間を活用し、ロフトや収納を設けるご依頼、提案は割とよくあります。
しかし一定の条件にて設計しないと、面積が増えるだけではなく、建築物の階数が変わってしまいます。
【小屋裏収納等の条件】
・直下階の垂直投影面積の1/2未満
・天井高さは1.4M以下
・直下が居室の場合はその居室の天井高さが2.1M以上
・窓を設ける場合はその面積の1/20以下
・下の図cのように床面がそろっていて床面積に算入させない場合は壁で区画する。
・基準を満たせば固定階段はOK
※以下神奈川県建築基準法取り扱い基準より
木造二階建て住宅にロフトや小屋裏収納を作る場合、
これらの条件から外れた設計をしてしまうと、2階建てが3階建てとなります。
木造の場合、2階建てと3階建てでは建築条件が全く異なりますので、リフォームの範囲でこれらを満たすために更に大がかりな工事を強いられますので、避けるのが賢明です。
具体的に2階建てと3階建ての違いの例を挙げると・・・
3階建ては構造計算が必要となります(許容応力度計算)
また、求められる耐火性も異なります(準耐火構造にする)
これらを合法に満たすように設計工事するためには下地仕上げごと変更するようなスケルトン工事になるほど大がかりなものとなるため、現実的ではありません。
(もともとその予定の工事であれば別ですが・・・)
境界までの距離が変わることで高さ制限違反となるケース
斜線制限には道路斜線、隣地斜線、北側斜線制限などがありますが、このうち道路斜線と隣地斜線には緩和措置として道路から後退している建物は、その距離に応じて高さ制限も緩和できる措置があります。
道路斜線なんかは結構この緩和措置を利用している住宅多いです。
ところが、増築してしまい道路から外壁の距離が近づいてしまうことで斜線の位置がずれてしまい高さ制限違反となる事があります。
斜線以外にも風致条例などでそもそも後退距離が定められているエリアもありますので、そのあたりもご注意いただければと思います。
採光・換気不足
居室には各用途ごとに床面積当たりの採光および換気の量が定められております。
間取り変更などにより、有効な開口部が足りないことがないようにプランをするのはもちろんなのですが、意外と盲点は(既存側は間取り変更していない)増築
住宅の居室の場合必要採光面積が床面積の1/7となります。
有効採光面積は細かい計算式は割愛させていただきますが、敷地までの距離が計算に影響してます。
増築などにより敷地までの距離が変わり、間取を変更しなくても採光面積不足になる事もあり得ます。
増築する部分だけではなく、既存の有効採光面積不足になっていないかチェックが必要です。
違反建築物はどうなる?
建築基準法に違反した建築物は【違反建築物】と扱われ、都道府県知事または市町村長(=特定行政庁)による行政指導の対象です。
行政指導に従わない場合は、建築基準法第9条第1項の行政処分を受けます。
内容としては除却・移転・改築・増築・模様替・使用禁止・使用制限などの措置が命じられます。
措置命令に違反することは犯罪であり、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科される可能性があります(同法第98条第1項第1号)。
特に前半のほうで述べた内容は、外から見て増築していることが判断できる内容になっております。
筆者も周囲の建物を見て色々気づいてしまい・・・報告こそしませんが、違法建築だなぁと眺めておりますので、意図せず建蔽率オーバーをしていて行政指導が入ることはあり得ると思います。
そうならないために、認識が広がればよいなと思います!
それではまた!
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