2025年建築基準法改正②~木造2階建ての住宅の新築はどう変わる?

建築HowTo

木造2階建て【旧4号建物 新2号建物】の設計、建築確認がどのように改正されているのかについて記事まとめたいと思います。

※改正省エネ法、改正基準法の背景やリフォームにおける影響(4号特例の見直し等)については下の記事にまとめました。

2025年建築基準法改正はリフォーム工事にどう影響するのか | うまもつこ@主婦建築士の快適生活 (umamochu.com)

①すべての地域で確認申請が必要になる

従来は、都市計画区域でのみ確認申請が求められておりましたが、改正後は都市計画区域においても確認申請が必要となります。
区域区分の説明図と用語の定義をまとめておきます。

市街化区域・・すでに市街地を形成している区域及び、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域

市街化調整区域・・・市街化を抑制すべき区域 原則として用途地域を定めない

非線引き区域・・・区域区分を定めていない区域

準都市計画区域・・・積極的な整備や開発を行わないものの、乱開発を防ぐために土地利用規制のみが求められる区域

都市計画区域外のエリアはは都市計画法の適用を受けない、市街化、宅地化が進んでいないエリアです。
法改正によって、除外されていたこのエリアにおいても、建築確認申請が必要となってきます

②四号特例の見直し

木造2階建て住宅はこれまでは【4号建物】に属しており、確認申請においては審査の一部が省略されておりました。(4号特例)

4号特例・・・建築基準法第6条の4に基づき、建築確認の対象となる小規模建築物建築基準法第6条1項第4号に該当する建築物)において、建築士が設計を行う場合には、構造関係規定等の審査の一部が省略される制度のこと。また、4号建物は大規模修繕(模様替え)工事においては建築確認申請は不要でした。

改正後は木造2階建て住宅は【新2号】に属することになり、4号特例が使えなくなります。
(新3号建物は特例あり)

※国交省マニュアルより画像引用

②審査の対象となる図書の拡大

①の4号建物から新3号建物へ区分が変わった影響により、これまで省略されていた構造関係規定に加えて、新たに省エネ関係の図書についても審査されることとなり、確認申請時に添付する図書が大幅に増えます。

※国交省マニュアルより画像引用

具体的に想定される図書は、これまでの図書などに加えて以下ような図書が必要となるでしょう。

・断熱性能などを確認するための仕様書
・構造詳細図
・見つけ面積計算表(壁量計算のため)
・壁量計算 耐力壁図
・四分割法判定
・N値計算
・採光計算、換気計算、
・設計一次エネルギー計算
・設備の機器表(一次エネルギー計算のため)


※基礎伏図、小屋伏図、床伏図、軸組図などについては、仕様書などで明確化されていれば省略できるように図られていく見込みとのことです

③省エネ基準への適合義務

※国交省マニュアルより画像引用

2025年4月施行の法改正により、すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられます


義務付けられる省エネ基準の内容は、建築物省エネ法に基づく建築物エネルギー消費性能基準と、品確法に基づく住宅性能表示制度の断熱等級4一次エネルギー消費量等級4に相当する基準となります。

なお、既存建築物については、省エネ基準への適合は求められません。
また、既存建築物を増改築する場合には、当該増改築部分についてのみ省エネ基準への適合が求められます。
修繕・模様替を行う場合も省エネ基準への適合は不要です。

④壁・柱の構造基準(壁量・柱の小径)が見直される

※国交省マニュアルより画像引用

木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化等に対応するために、必要な壁量や柱の小径等の基準が改正されます。

壁量計算・・・耐力壁の量が一致以上あることの確認を行う。
建物の荷重の実態に応じて、算定式により地震力に対する必要壁量を算定します。また、太陽光パネルを設置する場合は、その荷重も考慮します。

存在壁量の基準・・・腰壁や垂れ壁などの準耐力壁等を存在壁量に参入することができます。

柱の小径・・・横架材(はり等)の相互間の垂直距離に対して一定割合以上であることの確認
支援ツールとして、床面積当たりの柱の小径を一覧表にした『早見表』や、柱の小径や柱の負担可能面積を算定できる『表計算ツール』が用意されているようです。

既存住宅における取り扱いや、詳細の内容については具体化された資料を待ちたいと思います。

⑤採光規定の見直し

こちらの改正は2023年にすでに施行されているものになります。

住宅の居室には有効開口面積(窓の位置、敷地の距離などにより算定)はその居室の床面積に対して1/7以上必用とされておりましたが、床面に対して50Lx(ルクス)以上の照度を確保できる照明設備が設置されれば1/10まで緩和されるようになりました。

窓の大きさが小さくなると、窓からの熱損失も減りますし、省エネ的にも効果的ではあります。

⑥仕様基準を用いることで省エネ性能を簡単に評価できる

↓国交省チラシ 

001615405.pdf (mlit.go.jp)

仕様基準にて設計を行うことで、外皮計算が不要になったり、省エネ適合判定も不要になったり、確認申請で使用した資料を用いてBELS、長期優良住宅、住宅性能評価などにも活用できるようなるそうで、国交省では仕様規定の誘導推奨をしております。

まとめ

四号特例の縮小や、構造関係、省エネ関係書類の添付が増えることにより木造2階建ての住宅においては、これまでよりも確認申請がめんどくさくなるなるのではないか・・・・という懸念がありました。

実際業務が増えて大変だなぁと思う一方、可能な限り簡易化、合理化が図られている部分も見られました。

省エネ問題については、近年の異常気象、猛暑の状況をみても、看過できない状況であることは明らかです。

建築分野においては、エネルギー消費の約3割を占めているとのことで。
いよいよ本格的に低炭素、脱炭素事業に乗り出さなければならない状況なのでしょう。

※国交省マニュアルより画像引用

でも、少し引っかかることもあるんです。

省エネ性能の高い建材を作るにも、太陽光パネルを作るにもその製造過程においてエネルギー消費してますよね?

また、建築コストについても高気密化されればされるほど高価になります。

建築以外の物価もどんどん上がってきてますし・・・

建築士としては建築物の性能が上がる事も、省エネ化されることも賛成ではあるのですが・・・

ただ子を持つ親として、主婦として将来に不安を感じているのも事実です。

設計士としても、親としても何をどう選択していくか判断するためにも、常に情報に目を向け学んでいきたいと思います。

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