木造在来軸組工法、2階建ての間取り変更リフォームについて、具体的なリフォーム事例をご紹介しながら、間取り変更における注意点などを解説したいと思います。
建物概要と既存状況
今回例に挙げる間取りは築39年(1985年)木造(在来軸組)2階建て
屋根のコロニアルはアスベスト含有の可能性あり
外壁はモルタル
床下調査を行い、基礎の位置確認済み 湿気による軽度のシロアリ被害
小屋裏を覗き、軸組の状況や断熱材の有無を確認。
筋交いや金物の状況も確認したところ金物の利用はなく、かすがい、釘による固定程度であった
まずは1階の間取です。
玄関ホールを中心に広い和室とリビングとがそれぞれ独立した間取になっております。
二階は全部で4部屋、1階と合わせると5LDKと部屋数が多く、一つ一つのお部屋は閉鎖的に感じるプライバシー性の高い間取になっております。
ご家族構成は小学生の子供2人を含む4人家族となります。
家族同士のコミュニケーションをとりつつ、各個室のご要望もあがりました。
こちらの建物を耐震対策、劣化対策をしつつ大規模間取り変更を行います。
リノベーション間取
フルリノベーション工事となりますので、内部の下地などはすべて撤去します。
残せる柱は極力残していきますが、大幅な間取り変更のため柱も抜いていきますので、その場合は適切に梁補強。
状況にもよりますが、梁補強をするスパンは基本的には2間(3640mm)を超えないように計画しています。(柱1本にかかる負担が大きくなります。)
また、木造2階建の場合、主要構造部である階段の位置変更は可能です。
構造規模別の法律制限は以下の記事にまとめておりますのでご確認ください。
屋根上に設置されたアルミバルコニーを室内から入るとき腰壁ができてしまい、バルコニーに入るためのステップが必要だったのですが、ルーフバルコニーにすることで最低限の段差となりました。
後に補強計画でも説明しますが、下屋根部分は水平剛性が弱いので2階から1階への力の伝達がされにくいです。ルーフバルコニーにする際に床も補強できるので、耐震性もよくなります。
補強計画
間取り変更リフォームを行う場合、方針として必ず既存の強度<計画後の強度となるように計画しています。
1985年に建てられた建物は、俗にいう新耐震の建物となります。
壁量計算の判定も適合となりました。
しかし、金物の設置が十分でなかったり、建物のバランスの検討がされていない時期になりますのでその部分を改善したいと思います。
各年代ごとの耐震特性については別で記事を上げておりますのでご確認ください。
リフォーム工事のご依頼がある既存住宅は検査済証がなかったり、床下の一部が潜れない、小屋裏が見れないなど・・・既存の建物状況がわからないケースが多々あります。
その場合は数値が不利側になる方で計算を行い、既存の強度<計画後の強度となるように補強を加えます。
また、経年劣化による建物の老朽化を考慮して劣化係数軽減値0.7を乗じて数値を計算いたします。
細かい条件をいれると0.7以外の数値にもなるのですが、築10年以上は0.7で計算しといた方が良いと思います。
耐震診断の詳細については、別途説明記事を検討したいと思いますので、少々お待ちください。
まずは、今回はどのような計画になったかご紹介したいと思います。
左が既存、右が計画後になります。
※補強後北側の緑の点線は消してしまったものを再入力したため、新規扱いになってますが、実際は既存仕上を引きついでます。気にしないでください。
数値で注目するところが二つ、
一つ目は上部構造評点。
1.0を超えていれば建物が必要とされる耐力を満たしていることになります。
二つ目は偏心率。
表の配置軽減係数※( )内の数値が偏心率になりますが、0.15以下とすることが推奨されております。
壁量を確保しながら、建物のバランスも修正した結果が上の画像になります。
具体的に行ったことは
①耐力壁の接合部を強化
今回は接合部Ⅲ)Ⅳ)から接合部Ⅱ)へ
→接合部Ⅰ)平成12年建告1460号に適合する仕様にするとさらに強度あがります。
②1階においては既存の耐力壁45*90のシングル筋交い(2.0倍壁)→面材補強を足して4.5倍壁に
③光土間部分(既存は広縁)の下屋根を水平補強
④偏心率のバランスを見ながら、新規で耐力壁を追加(1階は4.5倍、2階は2.5倍)
※構造用合板による面材補強=2.5倍
※1階は新規で配置する耐力壁の直下に基礎があることが条件
⑤1階に4.5倍耐力壁がある場合は2階の同じ位置に耐力壁を配置しない→移設調整
1階2階それぞれ、X方向、Y方向の評点を1.0以上とする事、かつ、偏心率0.15以下になるように調整していきます。
※なお耐震工事をご希望されない場合も、間取り変更をする場合は計画後の数字が既存より悪くならない検討をおススメします。筋交いを触らないとしても、壁を変更すると数値は変わるのでご注意
補強計画の結果がでましたら、平面図におとして、図面調整をします。(柱の位置や開口部の見直など)
リノベーションの場合は、解体工事の段階で壁の中が確認できるので、着工後に構造状況の再確認をします。
また、リノベーションの場合は屋根や外壁も改修しきれいになりますので、劣化軽減係数を外して評価可能です。
しかし今回は安全側の検討を行うため外さずともクリアできる補強計画としました。
補強壁の詳細は以下の図書に乗っ取って施工してもらってます。
内装イメージ
南に配置した玄関土間に光をいっぱい注ぎ、その光がリビングにも伝わるよう間仕切りは採光の入る引き違い建具としました
また、梁補強により梁型がでてきてしまうので、一部天井を下げました。
仕上げも変えることで、デザインにアクセントが生まれましたね。
その他
劣化対策としては屋根の重ね葺き(葺き替えの場合はアスベストに留意)、外壁やりかえ、基礎のひび割れ補修等、床下の防湿コンクリートや、断熱性の高いサッシに入れ替え、断熱材も強化してますので気密性があがるので、換気計画も見直すべきだと思います。
今回は間取り変更にスポットを当てて解説しましたが、上記の改修工事の詳細や、部分リフォーム、部分補強、木造2×4構造、鉄骨構造、RC構造など構造や工事の内容によってそれぞれ注意点があります。
順次リフォーム提案事例と共にアップして参りたいと考えておりますのでまた見に来てくださいね。
それではまた!
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