解体してから見えてくる課題とその対応策をリアルにレポートします。
建物の概要
今回ご紹介する建物の概要について
・1987年の新耐震の建物
・純和風の大きく立派な建物使用している木材や造作などこだわりの素材が多い
・1階部分だけでも60坪近くあります。
・対して2階は15坪くらい 下屋根が多いです
・メインの柱や土台は4寸 場所によっては5寸~10寸と大変立派な柱ばかり
・床下や小屋裏の空間も大きい(階高も高い)
・図面がほとんどそろっていなかったため、不確定要素が多かった。
とかなり立派な造りですので、活かすところは活かしつつ、水回りやリビングなどは現代風に使いやすくするという計画です。
建物の半分くらいは工事を行わないのですが、規模としてはつ30坪ほどのリフォーム工事。
一部壁や柱を撤去して間取の調整を行いますので、工事を行うことで建物のバランスが悪くなったり、耐震性が損なわれないように検討しながら計画しました。
年代ごとの注意点などは以下の記事に詳しく記載しておりますのでご興味ありましたら覗いてみてください。
新耐震基準の建物なのに全壊!1981年~2000年に建てられた木造住宅の特徴と改善方法を解説 | うまもつこ@主婦建築士の快適生活
課題①~筋交いの接合状況
こちらの物件は立派な造り故、非常に階高が高いです。
天井も高かったです。
そのため、筋交いを土台から上部梁(横架材)の高さが高すぎて、おそらく角度が足りなかったのでしょう。上部の梁に筋交いが到達せず、柱の途中で接合されていました。
また、筋交いは釘で柱と結合されてますので、大きな力がく渡ったときに外れてしまう可能性があります。
具体的な地震による被害状況については、下の記事で解説しております
この部分は2階の荷重も受けていますし、隣り合う空間も大きく、たくさんの荷重を受ける壁面となるため、しっかりと補強したい個所になります。
向こう側の部屋の天井が非常に意匠性の高い素敵なラミ天井を使っておりまして、お客様はこちらを活かしたいというのがご要望です。
そのため、柱を足して2P筋交いを改善することはかないませんでしたが、
①今ある筋交いの接合部を改善すること(金物による補強)
②筋交いの高さに横架材を足して力を伝達してあげる
③隣の壁にも筋交いを増設(2.0倍壁)
④筋交いに加えて構造用合板による補強を加える(2.5倍壁)
という方法で改善することになりました。
完ぺきではありませんが、それでも補強前に比べるとかなり頼りになる壁面になるのではと思ってます。
課題②~柱を抜いて梁補強
先ほどの箇所とは別の部屋となりますが、和室を広くして洋室として利用する部屋になります。
下の説明書きのように、一部柱を抜いて梁補強で対応する予定でした。
ところが、
梁補強の柱が半柱となっていたこと、
柱がないと思っていたところに柱が隠れていた
という事が解体してみて判明しました。
柱をとってもスパンが1.5間程度だったのでそれほど大きな補強は考えてなかったですが、
見えなかった柱の補強を受ける相手も並行方向にはおらず(間くずれしていた通りからずれてる)
直行する方向の梁も受けることになりましたので、予定より大きな梁を入れることにしました。
課題③~増築部分の構造のちがい
こちらの建物、過去に1度だけ増築をしておりまして、その取り合い部分の外壁にひびが入っておりました。
解体してみたら、基礎が重量ブロックでできておりました。
また、本体建物は土台も柱も4寸ですが、増築部分は3寸と一回り小さいものを使っておりました。
コンクリートブロック面には筋交いは避けたいので、つなぎとなる面全体を構造用合板の壁補強で対応しました。
まとめ
今回は現在進行中の現場における対応の一部をご紹介いたしました。
図面がほぼない状況からスタートしてますので、現地調査で分からない部分は工事中に都度対応。
また、同時に建物全体のバランス(偏心率)が崩れないように耐力壁を配置していかなければならず、リアルタイムで計算をし続けていいます。
リフォームなので、どこまでやっていくか線引きが難しい場面もあるのですが、ポリシーとしているのは、すべての判断において
既存建物 < リフォーム後の建物
となるように選択しております。
既存建物については改善するべきところがあると同時に、感心するところも多く、当時の大工さんの拘りを感じながら工事に携わっております。
今は4寸柱の建物少ないんじゃないでしょうかねぇ
階高や床下が高いおかげなのか・・通気性がよいのでしょう。
黴臭さもなく、ネズミの糞ひとつ見当たらないとてもきれいな現場です。
色々な思いを感じとることができるのは、リフォームの面白いところですね。
それではまた!
コメント