平成28年4月に発生した熊本地震や、令和6年1月に発生した能登地震では、
旧耐震の建物だけではなく新耐震基準(昭和56年~平成12年)の木造住宅にも多くの被害が確認できました。
以前も、年代ごとの建物耐震性などを解説させていただきましたが、
今回は年代ごとの倒壊原因にスポットを当てて、耐震対策、減災対策に言及していきたいと思っております。
【熊本地震による木造住宅の被害状況】
まずは下のグラフは熊本地震の建築時期別に被害状況をまとめたグラフになります。
分けた建築時期については
S56年以前・・・旧耐震
S56年~H12年・・・必要壁量が強化された新耐震基準
H12年以降・・・バランス、接合部などの規定が規定された現行基準(※令和7年4月法改正前)
の3つに分けられております。
グラフを見ると旧耐震→新耐震の壁量強化により定の成果が得られており、旧耐震建物の耐震化は重要課題ではありますが、
新耐震基準であっても、安心できるものではないという事がわかると思います。


【旧耐震(S56年5月より前)の建物は壁量が足りない】
いわゆる旧耐震といわれる建物は耐力壁が不足しております。

※画像引用※エイム株式会社 かぞくまもるカタログより
壁量を増やすには、筋交いや構造用合板による耐力壁を追加してあげるのが有効です。
一般的な補強方法では、床や天井を壊して土台や上部梁まで施工する必要がございます。
断熱工事、間取りの変更などのリフォームに絡めて耐力壁の配置をご検討されるとよいでしょう。

※画像引用※耐震診断・耐震改修のススメ(国交省監修 一般社団法人 建築性能基準推進協会)
リフォームは検討していないが、耐震補強だけ行いたい場合は床や天井を壊す大掛かりな工事は避けたいですよね。
その場合はエイム(株)さんが出している【かべつよし】がお勧めです。

いずれの場合も、設計士による耐震診断、補強計画を行い適切な位置に施工する必要があります。
【S56年6月~H12年5月の建物はバランス、接合部、ホゾ抜け対策】
この時期の建物は壁量については満たしているケースが多いです。
しかし、ある方向に耐力壁が偏りすぎていると、地震力を受けたときに建物に回転しようとする力が加わってしまいます。(偏芯率)
偏芯率が悪い建物には、壁量が少ない側に耐力壁を追加したり、過剰な側の耐力壁を減らしたりする事が有効です。

偏芯率の数値が悪い建物には、壁量が少ない側に耐力壁を追加したり、過剰な側の耐力壁を減らしたりする事が有効です。
また、従前までは屋根などの重みで安定させていた接合部(ホゾやかすがいなど)が
横からの力を受けたときに、筋交いなどの耐力壁付近の柱がその形を維持しようとして、足元(柱と土台をつなぐホゾ)が抜けてしまう事があります。(ホゾ抜け現象)
これは高い倍率の耐力壁ほど起こりやすいため、阪神淡路大震災以降の地震で倒壊した新耐震基準の建物に見られた現象になります。

※画像引用※エイム株式会社 かぞくまもるカタログより

現行の建築基準法ではN値計算を行い、その引き抜き力に応じて接合金物を選定指定することになっております。
2000年以前の建物について、改めてN値計算を行い、すべての柱頭柱脚の金物を入れ替えられたら良いのですが、それってかなり大掛かりで現実的ではありません。
リフォームなどをご検討されている方でしたら、既存の耐力壁付近の接合金物を見直し付け替える事はとても有効です。
しかし、そうでない方にとっては、柱の金物を付け替える工事はとても負担に感じると思います。
そこで耐震補強とは少し異なるのですが、
減災という観点から、引き抜き力が大きくなりがちな建物の出隅部分に、ホールダウン金物を後からでも施工できる商品があります。
こちらもエイム株式会社さんになりますが、【かぞくまもる】という後付けホールダウン金物になります。


エイム 後付けホールダウン金物 かぞくまもる プロテクターセット【右タイプ】【1セット】 ※カバーは別売

エイム 後付けホールダウン金物 かぞくまもる用アッパーカバー ステンレス製 ベージュ

エイム 後付けホールダウン金物 かぞくまもる用ロアーカバー ステンレス製ヘアーライン【右タイプ用】
大規模リノベーションと耐震化工事を10年以上やってきたせいか、
耐震診断・補強計画によらないこの商品について、最初は微妙だなと思っていたんです。
しかし、耐震補強はその工事を行うのにそれなりの費用がかかってまいります。
180万~最近は物価上昇もあり240万ほどまで平均値が上がっているそうです。(ご参考価格)
メーカーの商品説明を聞いたときに【減災】という言葉で説明されていて、今までの抵抗感がなくなりました。
確かに、N値計算をすると主に建物出隅部の数値が大きくなります。
また、費用や工事を負担に感じて耐震補強工事を断念された方もいました。
ここ最近改めて耐震の事を勉強していたので、新耐震建物のホゾ抜けによる倒壊例を目にするようになり、これは何とかしなければならないな・・・と思っていたところでした。
耐震補強工事の選択をしない方々が、減災、防災として選択できるのだとしたら良いのではないか・・・と考えを改めました。
また、津波による被害にも有効になります。

※エイム株式会社 かぞくまもるカタログ画像より引用※

エイム 後付けホールダウン金物 かぞくまもる プロテクターセット【右タイプ】【1セット】 ※カバーは別売

エイム 後付けホールダウン金物 かぞくまもる プロテクターセット【右タイプ】【1セット】 ※カバーは別売

エイム 後付けホールダウン金物 かぞくまもる プロテクターセット【平面タイプ】【1セット】 ※カバーは別売
【まとめ】
これまでは、リフォーム+耐震診断という枠で提案をしておりました。
しかし、木造耐震を学ぶにつれてもっと広い 防災・減災という枠の中で様々な選択肢をご提案出来たらなと思うようになりました。
惜しみなく情報を提供し、少しでも多くの方に知ってもらい、安心した暮らしにつながっていただけたら幸いです
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